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第五十九回フリーワンライ企画ログ。全然時間内に終わらなかったので加筆修正UPです。

ジャンル:オリジナル和風戦国かも知れない。
使用お題:「この日だけは」「抜き身」「離さないと誓ったのに」



『必ずや本懐を遂げるべし。』



 夏が終わる。毎年、この日だけは必ず墓前に参るようにしている。水桶と柄杓を傍らに置き、袴の裾を捌いて墓石の前にしゃがんだ。蝉が鳴いている。酷く暑苦しいその鳴き声はその実、夏の終わりを告げるものだ。みーんみんみんみん。こめかみを一筋、汗が伝う。数珠をかけて合わせた手が熱く湿っている。閉じていた目をそっと開けば、目の前には小さな墓石。見上げる空にはいつの間にか鰯雲が高くたなびいていた。数珠を仕舞い、漆塗りに螺鈿細工の入った守り刀を懐から取り出す。すらり、と鞘を払えば抜き身の刃が光った。必ずや本懐を遂げるべし。母上。姉上。仇はこの平次郎が。


 夏が終わる。毎年、この日だけは必ず仏前に参るようにしている。花瓶に仏花を飾り、正座してひとつ仏鈴を鳴らした。コオロギが鳴いている。秋の訪れを告げるようなその鳴き声はその実、まだまだ暑い時期から聞こえるものだ。きりきりきりきりきり。胸元を一筋、汗が伝う。数珠をかけて合わせた手が熱く湿っている。閉じていた目をそっと開けば、目の前には簡素な位牌。障子越しには、日に日に明るくなる月影が青い光を差し込ませていた。数珠を仕舞い、小ぶりな脇差を傍らから取り上げる。すらり、と鞘を払えば抜き身の刃が光った。必ずや本懐を遂げるべし。母上。平次郎。仇はこの文音が。


 夏が終わる。毎年、この日だけは必ずこの場所にやってくる。菊を手向け、線香を上げるこの場所はかつては領主の館、今は何もないただの荒れ地だ。文音。平次郎。この母を許しておくれ。毎年こうして、もう二度と逢うことの出来ない我が子に詫びる。その二つの小さな手を、決して離さないと誓ったのに。私は今、たった一人でからっぽの両腕をぶら下げて歩いている。
 北と南、国の全てを二分した戦の中、私は夫と我が子を喪った。夫は戦へ出て帰らず、二人の子供たちは焼き討ちに遭い煙に巻かれて消えた。
 幼子だったゆえ、骨も残りはしなかった。討ち入った敵に攫われた私は妾とされ、今もその男に仕えている。私達の国は夫をたばかった裏切り者どもに二分されて消えた。亡き夫の形見の小柄を握りしめる。革の鞘に入れたそれには、たっぷりと鴆毒が塗られている。必ずや本懐を遂げるべし。文音。平次郎。仇はこの母が。
 私を捕えたあの男も、裏で糸を引いて私達を孤立させたあの大名も、機に乗じて裏切ったあの領主も、全て私が平らげてみせましょう。


 その日、その国を治める領主の館では盛大な宴が催されていた。敵対していた隣国との講和を兼ねた祝言である。夫婦となるのはその国の嫡男武継と、隣国の長女綾姫だ。世は戦国まっただ中、離合集散、下剋上を繰り返しながら大きくなった二つの勢力がこのたび和平を結ぶ。これでようやく平穏が訪れる、そうどちらの国の者も内心胸を撫で下ろしていた。
 そうそうたる顔ぶれで臨む婚儀、厳粛な空気の中で交される盃に映る己の顔が、緊張と憎しみに歪んでいるのを知るのは新郎と新婦の二人だけだ。新郎、墨川武継。幼名を平次郎。新婦、秋沢綾姫。元の名を文音と言った。二人は共に、墨川一派に騙し討たれて滅ぼされた芳河氏の子女ながら互いにそのことを知らない。武継は数奇な運命を辿って墨川の養子となり、綾姫は墨川討ち入りの混乱に乗じて進出してきた秋沢の養女として育てられた。
『おのれ秋沢』『おのれ墨川』
『『わが母と姉弟の仇』』
 懐に、袖に隠した守り刀と脇差へ手を伸ばす機を窺いながら、一の盃を飲み交し、二の盃に口をつける。それを部屋の隅で食い入るように見守る老女があった。この婚儀の炊事を手伝いに来た墨川配下の領主の妾だ。
 袖の下に隠し持つ小柄を握りしめる。次だ。三の盃にはこの鴆毒を。憎き仇どもの倒れる様を見届けたなら、己もこの小柄で喉を突こう。
 三の盃に御神酒が注がれる。盃を武継が飲み干す。綾姫が脇差に指をかけた。老女の拳が震える。武継も守り刀に手を伸ばす。


 ――必ずや本懐を遂げるべし。










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一時間では全然終わらず、かなり加筆修正入ってます。悲劇目指したんだけど。なんかちがくね?
ところで戦国時代。地元の歴史本読んでると半端ないどこでもかしこでも山城拵えて戦場にしてたらしく、これ普通にウチの前の道も行軍したんだな、と思ってちょっと感慨深かった。もう少し広い所で大々的にやってたのかと思いきや、すごいあっちこっちくまなく小競り合いの絶えない時代だったんだなぁ、と。
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《その1.ジャンル:現代》



  『貴方の本当に行きたい場所をご提案します』



 旅行代理店の売り文句に惹かれ、案内のまま山奥の村へとやって来た。
 相方を亡くしたその夏、私は仕事に忙殺され満足に新盆も迎えてやれなかった。
 八月末にやっと休暇を取り、だがする事も無く妙な旅に身を任せている。



 今夜は村名物の祭りがあると宿の者が言った。
 一風変わった祭りで参加者は皆左前に浴衣を着、決して喋ってはいけないという。

 会場には櫓が組まれ、要は時期遅れの盆踊りだ。

 手拭いを頭に被り、団扇を片手に二重の輪となり見知らぬ人々と踊る。
 空には皓々と満月が光り、照明は櫓の提灯のみ。

 くるりと回って内外が入れ替わる。すれ違いざま、ひらりと手拭いが翻る。

 私は確かに、恋しい人の横顔を見た。



 今宵満月。旧暦七月十五日だ。




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今回も性別フリーだったらいいな……!
困った時のウンチクだのみ。元のお盆は旧暦七月十五日なので、基本満月だそうです。
果たして何割地元民なのやら。
ちなみに浴衣が左前だの、手拭い被って踊るだのは捏造です。
ウチの地元の盆踊りは、手拭いと扇子とうちわ…だったかな? 三品使います。

最初に出て来るうさんくさげな旅行代理店、何かシリーズ化出来れば面白いだろうなぁと思ってます。
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 《その2.ジャンル:未来SF》



  『OBONシステム』



 それは地球歴8月15日だけ一般に解放される。
 人々は地区毎に設置された端末にIDを持参し、許されるたった30分を思い思いに、大切に過ごす。

 四畳半程度の小部屋には、端末と立体映像装置と椅子。
 IDを端末に入力し、椅子に座れば映像装置が稼働した。

「久しぶり」

 笑う娘は今年も一年分成長していた。

「高校の制服、よく似合うよ」

 そう言えば、嬉しそうにくるりと回る。


 ああ、これがあるから、私はどうにか生きていられる。


 たった30分の邂逅。
 5年前、交通事故で亡くした娘との。



 OBONシステム。

 それは国民全員の記録を電子上に残し、人工知能を用いてその人物を再現するシステム。

 一年に一度、この日にしかアクセスが許されない。



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地元が八月盆なのでそれに準拠しております。
つい、ランドセルとか制服とか買っちゃうらしいっすね、あれ……(涙)
毎年回線の混雑が酷そうですが、まあ未来の技術に期待しましょう……w
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以上2話、しっとり(じっとり?)系でした!
地元は何もしないので有名な真宗門徒なので、精霊馬も施餓鬼盆も何もないです。ある所がちょっと羨ましかったりしつつ、落雁のお菓子と果物供えて、盆灯籠(地元特有)を墓所に置いて終わり。
第五十六回フリーワンライ企画ログ。ほんの2,3行ほど追加。
使用お題:全て(君がくれた絆創膏・永遠少年(少女でも可)・囁きの雨・遠い視線の先に・落としたものは)
ジャンル:NOT巴市でオカルト系。目標は「清く明るく爽やかに、目指せ現代版姫嫁巫女!」でした(笑)



『きんいろ笑顔』



 長期休暇で実家に帰り、久々の上げ膳据え膳を堪能する。ようやく就活戦線を潜り抜けて一息吐いたと思ったら、今度は婚活だ旦那探しだと騒ぐ家族に辟易としながらも、やはり実家というのは色々と楽だ。ただ、あまりに長いお小言は流石に辛い。逃げるように家を出て、ふらりと近所を散歩することにした。
 近くの公園に立ち寄ってみる。小学校の通学路にあったこの公園は、昔は良く遊んでいた場所だ。だが、いつの時だったか夕方遅くまでここで一人遊びをしてしまい、怒った親に出入りを禁じられた。その後すぐに塾通いが始まったのもあり、そう言えば以来ここには足を踏み入れていない。
 公園に入ってしばらくすると、小学生くらいの男の子が一人、土の地面を這って何かを探していた。さらりとして艶々の金髪に目を奪われる。外国人だろうか。公園をぐるりと一周した頃には、暗く垂れこめた雲からぽつり、ぽつりと雨粒が落ち始めていた。しかし、相変わらず必死に土の上に這いつくばっている男の子が目に入る。
 このままでは濡れてしまう。そっと近づくと、うぅ、と嗚咽を飲み込むような悲しげな声が聞こえ、私は思い切って声をかけた。
「ねえ、何を探してるの?」
 私の声に驚き男の子が飛び上がる。短く整えられた艶々サラサラの金髪、海のような真っ青な目。私は状況も忘れてそれに見惚れた。こんな子が現実に存在するなんて。
「――宝物」
 おずおずと男の子が答える。
「どんな宝物なの? 私も一緒に探すよ。早く見つけないと、雨に濡れて風邪引いちゃうよ」
 視線を合わせるためしゃがみ込めば、上半身を起こした男の子がぱちくりと瞬いて私を見つめた。おお、やっぱり睫毛も金色なのね、と変な所に感心する。
「バンソウコウなの」
「絆創膏?」
「友達にもらったんだ。赤い、お花のついたやつ」
 それは随分と可愛らしい。男の子の持ち物とは思えないから、可愛い女の子にでも貰ったのだろうか。そう想像を巡らせながら、うん、うん、と私は頷いた。
「赤いお花のついた絆創膏ね。よし、一緒に探そう!」
 励ますように笑って小さな肩を優しく叩くと、ふわりと男の子が笑顔になった。


 金髪少年の落とし物を探して公園を這いまわる。しかし一向に見つからないうちに雨脚が強くなってしまい、私と少年は公園の隅に祀られた稲荷神社の軒先で雨宿りすることにした。行くつも並ぶ緋色の鳥居をくぐり、拝殿の軒先に上がり込む。
 ざあざあと木々の梢を細く揺らす雨は何かを囁きあっているようで、ぼんやり聞いていると眠たくなってきた。
 ――ほら、きっとあの子よ。
 ――あるじ様も気付けば良いのに……。
 本気でうつらうつらしてしまったらしく、不意にそんな声を聞いた気がした。はっとなって周囲を見渡すが、当然私と少年以外誰もいない。遠い視線の先に悲しみを映し、消沈している少年に掛ける励ましの言葉も出尽くした。居心地悪く沈黙していた私は、少年の名前を知らないことに今更気付く。
「ねえ、君の名前は?」
「ぼくの名前?」
「そう。私はね、鈴木華子っていうの」
 スズキハナコ。この名前が、私は昔あまり好きではなかった。それこそ山田太郎並のモブい名前だとか、まるでトイレの妖怪だとか、小さい頃散々からかわれたからだ。小学生という生き物は存外容赦なく、過酷な世界を生きている。
「すずき、はなこ……? ハナコちゃん?」
 うん、と頷く。その名前が好きになったきっかけが、何かあった気がするのだが覚えていない。いつの間にか「ハナコちゃん」と呼ばれることが好きになっていた。
「ぼく、カシ!」
「そう、カシ君かぁ」
 いわゆるキラキラネームというのだろうか。何と書くのかさっぱり想像のつかない名前を復唱して頷く。――カシ。木の名前ね、と昔何かの機会におばあちゃんが教えてくれた気がする。あれは何の時だったのだろう。
「ハナコちゃん! ほんとだ、ハナコちゃんだ!!」
 突然はしゃぎ始めたカシ君に驚く。カシ君は私の手を取ると、上にあがろう! と拝殿の中を指した。
「ちょ、待って、待って! 勝手に上がっちゃ駄目だよ」
「いいんだよ、ぼくのお家だもん!」
 神主さんの家の子だろうか。戸惑った私は思わず適当な言葉でカシ君を止めた。
「でも、絆創膏はどうするの? 宝物なんでしょ?」
 そんなもののことなど忘れたかのようだったカシ君は、私の言葉に一旦停止して、まあるい目を更にきょとんと丸めて小首を傾げた。
「うん? ハナコちゃんがいるからいいよ。……あれ? でもハナコちゃんのくれた絆創膏はハナコちゃんの宝物で、だから…………」
 本気で考え込むカシ君を前に、私も呆然としていた。
 そうだ、思い出した。赤い花柄の絆創膏。それは、私があげたものだ。
 正しく突然のフラッシュバック。小学生の頃、この公園で金髪の男の子に出会った。名前でからかわれた私は一人ぼっちで黄昏時の公園にいて、そこに金髪の男の子がふらふら歩いてきた。膝をすりむいて、痛そうに、悔しそうにしていたその子と目があって、私は思わず聞いたのだ。
『タカヒコにやられたの?』
 タカヒコとは、私をトイレの妖怪扱いしていじめてくれていたクラスの乱暴者で、この公園辺りでも弱虫や変わった子をみつけてはいじめて遊んでいた。きっと、この髪の色で何か言われたんだ、と確信した私はさらに勢い込んで言ったのだ。
『あのね! これあげる! 私の宝物だけど、これ貼ったら痛いの治るよ!!』
 男の子の金色の髪は、夕焼け色に照らされて凄く綺麗だった。何故今まで忘れていたのだろう。
『あ、ありがとう……』
 そうおずおずと礼を言って絆創膏を受け取ったその子はそう、間違いなく『カシ』と名乗ったのだ。――つまり、カシ君は十年以上、全く歳をとっていない。
「……――そっか。ごめん、忘れてた……私が、あげたんだよね。あの絆創膏……」
『私、はなこ。すずきはなこよ』
『ハナコちゃん。僕、カシ』
 そのはにかんだ様子の眩しい笑顔に、自分の名前が特別になった気がしたのだ。そんな大切なことすら忘れていた。
『『またあした』』
 そう言って別れた次の日から、私はこの公園に来ることを禁止された。――その理由はおそらく、帰りが夕方遅くなったからではない。
「うん! ハナコちゃんがくれたんだ。ハナコちゃんおっきくなってて、全然気付かなかった!」
 ぱあぁ、と嬉しそうな笑顔全開でカシ君が言う。毎日、待っていてくれたのだろうか。渡した絆創膏を使わず、大切に宝物にしていてくれたのだろうか。そう思うと嬉しくて、私はこの状況を喜ぶべきか恐れるべきか一瞬見誤った。
「う、うん。カシ君は、変わらないね?」
 気付けば頬を日の光が照らしている。雨が止んでいた。ぱちりと一つ瞬いた碧眼が、思い出したように己の身体を見下ろした。
「うん。ハナコちゃんと会いたくて、この格好で待ってたけど…………」
 ぱぁっ、と世界が虹色に光る。眩しくて目を細めた瞬間に、カシ君の身体がふわりと溶けた。
「そうか。人間の時間は速いんだったな。これくらいで丁度良いか?」
 目の前に、金髪碧眼の美男子が微笑む。


 ――お母さん。私、婚活しなくていいかもしれない。




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ハピエンなのかバッドエンドなのかは読んだ人次第…って、どうやら大体の人はこれハピエンとして読んで下さるもようです。書いてた当人は、書き上がって「結局神隠しじゃねーか!orz」と思ったけど違うみたい。ハピエンに見えるなら良かった!



カシ君=禾熾さんです。ハナコちゃんはLL未登場ですが禾熾さんの彼女さん。二人ともほぼ名前だけ拝借。
本名・鈴木華子、暗刺名・鈴華。PK-LT型の能力者。バトルヒロインですのよ。ハナコちゃんと呼ぶと怒ります(理由は↑作中と同じ)。でも禾熾さんは執拗に「ハナコちゃん」と呼びます。

あともう一回、お盆ネタで怪異系がありました。
【管理人について】

三十路です。

趣味は小説・絵。ネトゲ。

WJバトル漫画系統が好きです。腐ることもたまにある。
自サイトのお話は基本恋愛と縁遠い感じの活劇? なのが多めでしょうか。

アリプロ・Angela・Mellなど、アニメのOP・EDから大体音楽は拾ってきますw
【Comment】
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