《その1.ジャンル:現代》
『貴方の本当に行きたい場所をご提案します』
旅行代理店の売り文句に惹かれ、案内のまま山奥の村へとやって来た。
相方を亡くしたその夏、私は仕事に忙殺され満足に新盆も迎えてやれなかった。
八月末にやっと休暇を取り、だがする事も無く妙な旅に身を任せている。
今夜は村名物の祭りがあると宿の者が言った。
一風変わった祭りで参加者は皆左前に浴衣を着、決して喋ってはいけないという。
会場には櫓が組まれ、要は時期遅れの盆踊りだ。
手拭いを頭に被り、団扇を片手に二重の輪となり見知らぬ人々と踊る。
空には皓々と満月が光り、照明は櫓の提灯のみ。
くるりと回って内外が入れ替わる。すれ違いざま、ひらりと手拭いが翻る。
私は確かに、恋しい人の横顔を見た。
今宵満月。旧暦七月十五日だ。
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今回も性別フリーだったらいいな……!
困った時のウンチクだのみ。元のお盆は旧暦七月十五日なので、基本満月だそうです。
果たして何割地元民なのやら。
ちなみに浴衣が左前だの、手拭い被って踊るだのは捏造です。
ウチの地元の盆踊りは、手拭いと扇子とうちわ…だったかな? 三品使います。
最初に出て来るうさんくさげな旅行代理店、何かシリーズ化出来れば面白いだろうなぁと思ってます。
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《その2.ジャンル:未来SF》
『OBONシステム』
それは地球歴8月15日だけ一般に解放される。
人々は地区毎に設置された端末にIDを持参し、許されるたった30分を思い思いに、大切に過ごす。
四畳半程度の小部屋には、端末と立体映像装置と椅子。
IDを端末に入力し、椅子に座れば映像装置が稼働した。
「久しぶり」
笑う娘は今年も一年分成長していた。
「高校の制服、よく似合うよ」
そう言えば、嬉しそうにくるりと回る。
ああ、これがあるから、私はどうにか生きていられる。
たった30分の邂逅。
5年前、交通事故で亡くした娘との。
OBONシステム。
それは国民全員の記録を電子上に残し、人工知能を用いてその人物を再現するシステム。
一年に一度、この日にしかアクセスが許されない。
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地元が八月盆なのでそれに準拠しております。
つい、ランドセルとか制服とか買っちゃうらしいっすね、あれ……(涙)
毎年回線の混雑が酷そうですが、まあ未来の技術に期待しましょう……w
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以上2話、しっとり(じっとり?)系でした!
地元は何もしないので有名な真宗門徒なので、精霊馬も施餓鬼盆も何もないです。ある所がちょっと羨ましかったりしつつ、落雁のお菓子と果物供えて、盆灯籠(地元特有)を墓所に置いて終わり。
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