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フィラーシャ→フィルート
サリアス→サリアス(まんま)
ルチルナ→ルチルス
フォート→フォルテ
魔王復活の託宣が下って五年。
空は荒れ、地は乾き、天変地異と戦に疲れた大人達が明日を諦めた世界で、形骸化した「勇者」の称号と「魔王討伐」を拝命した少年達は、たった二人で明日を勝ち取る戦いに挑む。
――やり尽くした後でないなら、成功するか否かは未知数だ。
気弱で優しい魔導師のフィルート、熱血戦士サリアス。謎の女剣士フォルテに、魔王に復讐を誓う盗賊ルチルス。たった二人の少年が、純粋な想いで踏み出した小さな一歩が、次第に周囲を巻き込んでゆく。
しかし、過酷な旅の中明かされる真実は残酷なもので――。
って、何か全然違和感ありません。むしろ王道っぽいです。うん、当然か。
「いやなんか、あざとくね? 狙い過ぎじゃね?」って言われました。
上のあらすじだけだとそうでもないですが、内容を全部男子にして読むとえらいBLですw 酷過ぎるww
それでは、娘三人の各登場シーンを。名前と人物描写が変わってます。(フォートは割愛)
〇フィルート
そんな匂いや喧騒に誘われるように、ふらふらと露天商や屋台を覗きながら歩く少年がいた。
行き交う者の殆どが黒髪、象牙色の肌に軽い麻の服を纏っている中で、その少年の風体は異彩を放っている。
抜けるように白い肌に、まだ歩いていると暑いのか、少し上気した頬は血の紅だけを薄く刷いた薄紅色。丁寧に短く切り揃えられた髪は、全く癖のない見事な銀髪だった。そしてあちらこちらに興味を移し、何かを見つけてはくるくると表情を変える大きな猫目は、遠浅の海を写し取った様な鮮やかな碧である。
その容姿は彼がこの聖都の生まれではなく、もっと北の、遊牧民の流れを汲む民族であることを示していた。しかし、当人はそうした周囲との違いを気にする様子もなく――というよりもむしろ、違いに気付くような暇などない様子で忙しくあちらこちらを覗いている。周囲も他民族など珍しくないようで、完全にお登りさんであるらしい少年の存在を受け流していた。
〇サリアス
巨大な剣をダナスに向かって構えたのは、異変を聞きつけてこの漁師町に駆けつけた地元民の戦士だった。くせ毛の黒髪は無造作に短く切られ、この地方独特の象牙色の肌をした、筋骨逞しく鍛え上げられた四肢を剥き出しに、涼しげな麻の衣服をまとっている。歳は二十を越えるか否かといったところか。きりりと吊り上った意志の強そうな琥珀色の眼をした、背の高い青年だ。
彼は明日からの旅に備えるため、必要な物を買い足しにたまたま近くの夕市に来ていたのだ。警邏任務に就いていたわけではないので鎧は着ていないが、常に剣だけは背負って歩いているのが幸いした。
避難する人々を避けるために屋根の上を駆けつけた彼は、屋根の上からダナスと対峙した。身の丈近くある大きな両手剣の狙いを敵の眉間に定め、腹に力を込めて宣言する。
〇サリアスとフィルート
「あはは……そんな、大げさだよ。二人とも神殿に用事があったからこの辺りに居たんだし……それに、僕はそんな大した事出来てないもん。何て言うか、やっぱ向いてないかな、なんて思ったりして――」
「そんな事はないっ!」
整った石畳の敷かれた足元へ視線を下げつつ、辞退の口実にしようと夕刻の自分の不甲斐なさを口にしかけたフィルートを、周囲が足を止めるような大音声でサリアスが遮った。周囲以上に驚いて立ち止まったフィルートの両手を、サリアスが己の胸の前でしっかと握り締める。
「何を言っているのだ、フィルート。お前はあの時飛散する瓦礫から人々を守り、献身的に怪我人の治療に当たったではないか! 確かに敵を倒す事も重要だが、弱き人々の命を守る事はそれ以上に尊い事だ。何を恥じる必要がある! それに共にダナスを退治してくれた旅人も、貴方の指示を受けて俺に協力してくれたというではないか」
(中略)
しかしそんな勘違いよりも今は強く握られた両手が痛い。そして熱い。ついでに真正面上方から注がれる琥珀色の視線も強くて熱くて痛い。至近距離からきらきらと音がしそうなほどの熱い視線を送られて、フィルートは殆ど恐慌状態に陥っていた。
(中略)
「……そうか、そんな事になっていたのだな……」
低く抑えられた声が、フィラーシャの耳に届く。
「う、うん」
怒りよりも落胆が激しかったのかと、申し訳ない気持ちでフィルートは頷いた。しかし決然と顔を上げたサリアスは、フィルートを正面から、熱い視線で見据えて言い切った。
「ならばなおの事、俺たちが行くしかあるまい。フィルート、それはつまり、俺たちをおいて、この世界を救う真の勇者になれる人間は居ないということだ」
(中略)
時折起こる目を射るほどの発光に、眩しそうに目を細めたサリアスがフィルートに微笑みかける。涼しげな目元を緩め、柔らかな金の光を瞳に湛えて微笑む様は、どうしようもなく男前だ。
(中略)
「でも、何だろ、サリアスの言葉を聞いてると、何か……何かやれそうな気がしてくるよ。何かやってみたいって思った。僕、臆病だしのろまだし、何も出来ない気がするけど……でも、何か出来るならやりたい、って思ってるのは嘘じゃないんだ、多分」
「行こう、フィルート。行って、成し遂げよう。俺も叶うのであれば、他の誰かよりもお前と共に旅をしたい」
見上げるフィルートを迎えたのは、力強い言葉と翳りの無い視線。負の感情の気配が一切無いそれに安堵と喜びを感じながら、フィルートはそれでも尋ね返した。
「いいの? 僕で。なんで……」
それまでの確信に満ちた様子からは一変、困ったように眉尻を下げてサリアスが答えた。
「…………そう、だな、お前の想いは本物だと思うから……だろうか」
(後略)
うん、これだけでご馳走様ですね!!!!
二人の人称変えるだけでのたうち回るようなこそばゆい展開になったよ!
サリアスが「俺」「お前」言うだけでもうアレだった……!
ルチルス加えたシーンはまた今度!
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