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「――で、宮澤君は確か、神道系の大学を卒業しとるんでしたよね。神職の資格は持っとってんです?」
そう係長に確認され、美郷は「はい」と頷いた。特自災害の係長は、美郷より二周り上という短身痩躯の男性である。温和な口調と雰囲気ながら、豊富な経験と知識を駆使して係員達の相談にてきぱきと応じ、指示を出していく姿は鮮やかなものだ。危機管理課には特自災害係の他に通常の防犯・防災を担当する防犯防災係が別室にあり、危機管理課長はそちらにデスクを持っている。そのため、特自災害の実質的なリーダーはこの係長だった。
正確に状況を言い表せば、課長と防犯防災係が別室に居るのではない。十中八九、この特自災害係が別室に押し込まれているのだ。年季の入った市役所本館の三階、市議会の議場があるため他に殆ど事務室が存在しないフロアの奥まった隅っこに、特自災害の部屋はある。隣に建つ五階建ての新館の影に入るため最上階なのに日当たりは悪く、階段を上ってすぐにある部屋の向こうは議場であるため、他課の人間や市民が通りがかることも滅多に無い。まさしく「片隅」と言うに相応しい場所に美郷の新天地はあった。
「ほいなら、早速ですが辻本君と一緒に現場に出てもらいましょうか。辻本君、宮澤君も連れて出てあげて下さい。ああ、それから、宮澤君。もし持って来とったら、作業服に着替えてから出られた方がええですよ。汚れますけえ」
職員には作業ズボン、ポロシャツ、ジャケットが貸与される。いわゆる「役場のおじさん」が着ている作業着だが、巴市のジャケットは真紅の生地に黒のラインが入った鮮やかなものだ。
係長に声をかけられた男性職員が、公用車のキーを片手に返事をする。辻本は大柄で均整のとれた体躯をした、三十代半ばの先輩職員だ。今後一年間、美郷の職務を一緒に担当し、直接美郷を指導してくれる相手である。体育会系にも見える立派な体躯に反して穏やかな雰囲気の持ち主であり、始終にこやかに周囲と接する姿が印象的な人物だった。
今日が初勤務であるにも関わらず、簡単に別室の課長、そして目の前の係長に挨拶をしただけで、即、現場に行かされるらしい。それもその筈で、本来ならば美郷も含めて計十人がいるはずの特自災害係の部屋には、現在たったの四人しかいない。実は三月初めから連続して事件が発生し、皆、その現場に出払っているのだ。
「それじゃ、行きましょうか」
貸与品の市役所指定作業服である、真紅のジャケットを着た辻本が、にこやかに美郷を促して外へ出た。
てか、此処だけ読んでどんな話か想像すると、どんな話に見えるんだろうwwwww
油断するとオッサン率が上がって話が渋くなる気がする。実体験がモデルとはいえ、華の無さがパネェw
ちなみに、係長の口調は実際にこんな感じで喋る方がおられます。その人の声で脳内再生されてます(笑)
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